防犯講話・講習会及び防犯設備機器等の設置・施工の実施
府民のみなさまに安全で安心して暮らせるまちづくりを中心に、家、ビル、その他の対象物における安全対策について、防犯講話をボランティアで行っています。
また自治体・警察、府民等の要請により、防犯カメラや防犯設備機器等の設置について、その適正な設置場所や方向、設置する防犯設備機器の種類等、現場で確認しながら、アドバイスを行い、要請があれば、信頼できる会員を紹介し、施工工事も実施しております。
防犯講話の要点
ここに掲載した防犯講話は、当協会の防犯設備アドバイザーが府民の依頼に基づいて講話したもので、その要点である。
安全で安心して暮らせるまちづくりのあり方
はじめに ・・ 現在の犯罪対策の基本
「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」(犯罪対策閣僚会議)行動計画2008(平成20年12月)が示された。
従来通り次の3つの視点をあげ、
① 「国民が自らの安全を確保するための活動の支援」・・自主防犯活動
② 「犯罪が生じにくい社会環境の整備」・・犯罪に強い社会環境の構築
③ 「水際対策を始めとして各種犯罪対策」・・各行政機関による予防・取締り
そして、目標としている「世界一安全な国、日本の復活」として、
○ 犯罪の減少(安定期の140万件程度)
○ 国民の不安感の払拭
の両方が達成された状態を「良好な治安」として位置づけ、「犯罪が起きない起こさない環境」の構築のため、「地域の絆」の再生が必要であるとした。
1 犯罪情勢をどう見るか。
犯罪情勢が悪化していると言われているが、どうなのか ・・ 安全なまちづくりが今必要なのか。
(1)安全と安心 ・・安全と安心は違う概念
一般に安全で安心して暮らせるまちづくりといわれるが、安全と安心は異なる概念である。
○ 安全とは・・客観的に犯罪リスクが小さいこと。(治安指数)
○ 安心とは・・リスクがゼロの状態としてではなく、(主観的に)容認できるところまで押さえること。(体感治安)
日本人のリスク感の特徴として、リスクに対して極めて敏感であり、安全よりも安心を重視し、ゼロリスクを求めるがリスクに対してあきらめてしまう傾向にある。
(2) 治安指数は減少傾向にあるが、体感治安(不安感)は必ずしも良くなっていない。
○ 治安指数の推移
全刑法犯の認知件数(全国)は、昭和26年以降、昭和50年代まで140万件前後であったのに、平成14年289万件と約2倍に増加し、その後減少に転じ、平成30年81万件まで減少している。
○ 体感治安 ・・ 世論調査の結果、必ずしも、治安指数の減少ほど、良くなってない。
2 安全・安心なまちづくりの基礎理論(犯罪予防論)
「平成期の犯罪情勢の悪化」を受けて、犯罪対策は犯罪予防が中心となって展開されるようになった。
(1) 防犯環境設計(状況的犯罪予防論)
防犯環境設計・・人の居住環境は、個々の家、種々の建物、道路、公園等の複合した環境とそこに住む人々の意識によって形成されており、犯罪は環境を介して生じる現象であることから、犯罪を制御し、犯罪リスクを削減(不安感の除去)できるかどうかは、これらの建物、街、環境等のしつらえ方とそこに住む人々の意識に負うところが多いとされ、防犯環境設計という考え方が確立されていく。
※ 環境・・建物・都市空間を制御、地域コミュニティの両面がある。
どのような犯罪から、誰を守るかを明確にして、4つの要素に着目して対策を考えていく。
① 犯罪対象の防犯力の強化 ・ ・ 直接的手法
防犯用のハードウエアの装備を重視し、人的及び物的な被害対象への犯人の接近を制御し、犯行の機会をなくそうとするもの。
▽ 被害対象物の強化・回避(target hardening)
対象物(建物、街)を強化することで、物理的に犯罪企図者の犯行に対抗する、あるいは犯罪企図者の意欲を低下させる。
▽ 接近の制御 (access control)
ある空間の利用が、正当な利用者に限定されるように設計する。このことで対象への接近を制御し、犯行の機会を奪う。物理的な接近の制御と心理的な接近の制御がある。
② 守りやすい環境の設計 ・ ・ 間接的手法
近隣単位で領域性の意識を高める工夫を凝らし、設計によって、周辺環境を見守る目が自然に多くなるようにすることにより、犯行の意欲や機会を減らそうとするもの。
▽ 監視性の確保 (natural surveillance)
ある空間が、正当な利用者によって常に見守られているように設計する。このことによって、犯罪企図者の不審な行動を制御する。特に、対象への監視性を確保することが重要である。自然監視性の確保と機械監視の2つに分類できる。
▽ 領域性の強化 (territoriality)
ある空間、常に正当な利用者によって利用・手入れ・維持されることで、その場所に相応しくない者の侵入・滞留を抑制する。
(2) 社会的犯罪予防論
ある者に犯罪の機会を与えているのは、個人的社会的要因であるとの仮説に基づき、その要因は、家庭環境、学校との関わり合い、仲間の影響、道徳的価値、文化的影響等、個人的、社会的、時代的、要因が重層して作用しているとする。コミュニケーション構築のための前向きな社会的活動を促進し、そこに住む人たちが、連携を図りながら、自分のまち、ストーリーに愛着を持ち、領有感をもって、そこで起こるいろいろな問題を自分の問題として解決し、犯罪に強いまちづくりをする。
※ 少年の非行防止策、状況的犯罪予防論の批判として近年特に強調される。
3 安全なまちづくりの具体的な進め方
(1) 活動の主体 ・ ・ 自治体自らがイニシアティブをとり、地域住民、警察、学校、事業者等が一体となった活動
○ 地域分権による基礎自治体の役割分担の変化
地方分権が推進され、基礎自治体の役割が強化されてこようとしている。既に、我が国の安全なまちづくりでも、財政を持つ基礎自治体が中心となって展開される方向が出てきているが、警察主導の市町村も結構みられる。
○ 警察主導から地域住民との協働へ ・・ コミュニティポリシングという考え方
○ 警備業など安全産業の役割の増大 ・ ・ 防犯ボランティア活動などの活性化
(2) 活動の対象 ・ ・ 犯罪被害の防止のみでなく、広く地域社会の秩序の維持
○ 犯罪 + 秩序違反行為 ・ ・ 割れ窓の理論
(3) 活動の内容 ・ ・ 地域の絆の再生を模索しながら、犯罪の未然防止対策を軸として多機関協働で推進する。
○ 地域社会連携の再構築 ・ ・基礎
長い間続いた日本の血縁・地縁共同体が、個人中心の社会とのかわり、その結果として、公共の軽視・否定の風潮が一般化してきた。これは従来日本の社会がもっていた犯罪抑止力を低下させるとともに、相互扶助の機能を喪失されている。また、個人中心の社会であるから、社会の規範を中核とした社会規範がなくなってきている。
① コミュニティ形成の促進 ・・地域の絆
コミュニティづくりのための統合的アプローチ
② 防犯意識の高揚
③ 具体的な自主防犯活動の促進 ・ ・ 防犯ボランティアによる防犯パトロール、見守り活動の推進など
④ 街の維持・管理の徹底・・まちのイメージアップ
○ 防犯環境の整備 ・・ 補完
社会的防犯環境設計と相互に補完される形で、物理的防犯環境設計が行われる。
① 監視性の確保・・防犯照明の増設、街頭防犯カメラの設置
② アクセスコントロール
▽ 対象物の回避・・防御の強化
▽ 交通の規制・・通過交通、速度・駐車・駐輪の規制強化
○ 問題志向型警察活動の展開・・犯人の検挙を含む事案への対応など、1つ1つの問題について、多機関が連携して対応する。
4 将来の展望
安全で安心して暮らせるまちづくりは、行政と警察との連携した支援のもと、地域住民の積極的な参画と連携した活動によって支えられていく。地域住民の防犯意識が醸成され、各種活動を通じて地域住民の理解と共感のもと、地域住民が連携し、地域安全活動に参画することが求められる。
その中核をなすのは「コミュニティの形成」であるが、前述のようにソフト面だけでなく、ハード面でも重視され「コミュニティを育む」まちなみづくりの研究と実践がなされている。
結び
今、大阪府下では府民との協働の下、安全で安心して暮らせるまちづくりが実施されている。まちの安全が保たれて、はじめて、あなたの家、事業所等の安全が維持される。あなたのまちをそのようなまちにするのは、あなたの責任。安全は生活のすべての基盤であるが、防犯インフラ整備はまだまだ不足している